基礎知識

Disease Basics
診療案内

思春期の方は、うつ症状の治療にリスクがあるため保護者の同伴をお願い致します。

18歳未満の方(思春期の方)でうつ症状を呈している方の特徴

A 抗うつ薬によって自殺念慮が強まる可能性があります
思春期のうつ病の方で注意しなければならないこととして、抗うつ薬によって死にたい気持ちが増える可能性があります。逆に25歳以上のうつ病の方では、抗うつ薬によって死にたい気持ちが減ると報告されています。そのため、抗うつ薬の添付文書には「抗うつ剤の投与により、24歳以下の患者で、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、本剤の投与にあたっては、リスクとベネフィットを考慮すること。」と記載されており、抗うつ剤導入には本人・ご家族にリスクをご理解いただいた上で慎重に検討する必要があります。

B 成人と比べて抗うつ薬の効果が少ない
思春期のうつ病の方に対しても抗うつ薬は効果がありますが、その効果は成人よりも少ないといわれています。また抗うつ薬の種類によっては自殺念慮の危険性が増し、抗うつ作用の効果が乏しいものもあり、注意が必要です。

C 思春期の方は、うつ症状の原因として双極性障害が成人と比べて多い傾向があります
思春期は双極性障害を発症しやすい年代であり、治療法がうつ病とは異なります。双極性障害の方が抗うつ薬のみを内服しても効果が少ないどころか、躁転、急速交代化、自殺、自傷の危険が増すことがあります。気分が高揚したり、多弁になったり、眠らなくても何でもできると思うようなエピソードがあれば双極性障害の可能性があり、注意が必要です。

(1) 躁転
抗うつ薬によってうつ状態から一気に躁状態になることです。躁転の危険因子は以下の通りです。
■ 双極性障害Ⅰ型の人は、Ⅱ型より躁転リスクが高い。
■ 薬剤の種類による躁転リスク:三環系抗うつ薬、SNRI > SSRI > NaSSA
■ 内服中の抗うつ薬の種類が多い。
■ 気分安定薬や非定型抗精神病薬と併用していない。
■ 女性
■ 家族に双極性障害の方がいる
■ 若年者
■ 過去に薬剤乱用をしていた方
■ 過去に薬剤による躁転のエピソードがあった方
■ うつ状態や躁状態を繰り返している方
注意点:必要に応じて気分安定薬や非定型抗精神病薬と併用し、三環系抗うつ薬やSNRIは避け、抗うつ薬は単剤で使用し、症状改善後は早めに中止することが望ましいです。

(2) 急速交代化
双極性障害では、躁状態とうつ状態の間に間欠期や維持期があります。抗うつ薬によりこの期間が短くなると気分の不安定さが増す状態を急速交代化といいます。急速交代化がみられた場合は速やかに抗うつ薬を中止する必要があります。危険因子は、女性、甲状腺機能障害の方です。

(3) 自殺・自傷のリスク
双極性障害の方は特にうつ状態において自殺リスクが高いといわれます。抗うつ薬の初期使用で賦活症候群が生じることがあり、不安・焦燥感・易刺激性・イライラが強まり衝動性が高まる状態です。混合状態では特に危険で、抗うつ薬によって自殺リスクが増す可能性があります。

D 自傷や自殺未遂などが多い
思春期の方は、抗うつ薬の副作用のリスクの有無にかかわらず、成人と比べて自傷や自殺未遂といった行動を起こしやすいことがわかっています。

思春期うつ症状の治療
(1) 休むこと、無理をしないこと
思春期のうつ状態の方は休養が必要です。学業は続けても構いませんが、無理に成績を上げようとせず、可能な範囲で学習を続けることが重要です。一人で難しい場合は家族のサポートを受けることで、自己肯定感を維持できます。

(2) カウンセリング
思春期の方には、薬物療法より副作用の少ないカウンセリングを推奨します。認知行動療法や対人関係療法は、単独で抗うつ薬と同等の効果があるといわれています。当院では専門の心理士が不在のため、あいち保健管理センターなど心理士が多数在籍する機関へ紹介いたします。他院の精神科・心療内科への紹介も行います。

(3) 薬物療法
思春期のうつ病に対する抗うつ薬は、自殺念慮が強まる可能性があります。しかし、効果が自殺念慮の程度より大きい場合はメリットがあると判断され、使用されることもあります。メリット・デメリットを考慮し慎重に使用する必要があります。

当院では基本的に高校生以上を診療対象としています。未就労者は保護者の同伴をお願いしています。抗うつ薬、睡眠薬、抗不安薬などの薬剤使用は若年者にリスクがあるため、十分ご理解の上での使用となります。また、高校生以上でも当院で対応が困難な場合は、他の精神科・心療内科への受診をおすすめすることがありますのでご了承ください。




いなざわ駅前内科クリニックでは、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病をはじめ、頭痛、脳卒中、パーキンソン病、認知症、てんかんなどの脳神経疾患、不眠症、うつ病、適応障害、アルコール依存症、不安症、強迫性障害などの精神疾患・メンタルヘルスの問題に対応しております。一宮市、名古屋市、稲沢市、岐阜市、清須市、岩倉市、津島市、愛西市、あま市、北名古屋市など、幅広い地域から多くの患者様にご来院いただいております。稲沢市で内科・脳神経内科・心療内科・精神科をお探しの方は、いなざわ駅前内科クリニックへお気軽にご相談ください。