基礎知識

Disease Basics
診療案内

起立時の頭痛、めまいなどの症状は、脳脊髄液減少症による症状かもしれません。

脳や脊髄は硬膜やくも膜と呼ばれる膜に覆われており、その中を脳脊髄液が満たしています。脳脊髄液減少症は、髄液漏出、髄液産生減少、髄液吸収亢進などが原因で脳脊髄液が減ることで頭痛、めまい、耳鳴り、倦怠感などさまざまな症状を呈する疾患である。
脳脊髄液減少症には、低髄液圧症候群、脳脊髄液漏出症を含み、髄液圧が低下して髄液圧を維持できなくなってしまった状態を低髄液圧症候群であり、何らかの原因で硬膜に穴が空き、脳脊髄液が硬膜の外へ流出してしまった状態が脳脊髄液漏出症と呼びます。

低髄液圧症候群の特徴

  1. 起立性頭痛で起立位による頭痛の増悪と、臥位になることで頭痛の軽減、消失を認める。
  2. 髄液圧低下を認める。一般的には6cmH2O以下で低髄液圧と判断されます。
  3. 頭部MRI造影画像にて、びまん性硬膜造影所見を認める場合が多い。脳脊髄液 が減少すると代償性に血液が増加し、静脈が拡張する静脈拡張、下垂体拡張 を認めることもあります。
  4. 安静臥床、水分摂取や点滴による水分補充など保存的治療が効果的であることが多いが、病状が遷延化する場合や硬膜下血腫を伴う意識障害の症例など重症例には、ブラッドパッチ治療が必要となることがあります。
  5. 慢性化する場合は、起立性頭痛の軽減や髄液圧の正常化などを認めることが多い。
  6. RI脳槽シンチ、CTミエログラフィー、MRミエログラフィーで髄液漏出像や硬膜外液体貯留像など陽性所見を認める場合が多い。

脳脊髄液漏出症
脳や脊髄を包む硬膜に穴が開き、脳脊髄液が漏れ出ることで起こる疾患です。頭痛、めまい、嘔気、耳鳴り、倦怠感など他の不定愁訴を伴う場合が多く、頭痛に関しては起立性頭痛でない場合もあります。 髄液圧は正常圧の場合が多く、頭部MRI造影画像にてびまん性硬膜造影所見など特徴的な所見を呈する場合が少ないです。髄液漏出像の確認のためRI脳槽シンチ、CTミエログラフィー、MRミエログラフィーが行われますが、特徴的な所見を呈する場合もあります。
原因として不明な場合もありますが、交通外傷など強い衝撃の場合もあります。また、腰椎穿刺後に起立性頭痛を生じる場合があり、腰椎穿刺の針孔から髄液が漏出するためと考えられています。通常は、数日間の安静で治癒しますが、稀に起立性頭痛が長期化する場合があります。

症状
起立性頭痛 (起き上がると頭痛が出現する)、頚部痛、全身倦怠感、めまい、吐き気、耳鳴り、自律神経症状(動悸・発汗異常など)などがあります。

検査

  1. 脳MRI画像

・造影MRI画像でびまん性硬膜増強効果
・脳下垂所見
・高位円蓋部硬膜下腔、くも膜下腔の拡大所見
・硬膜下血腫
・脳室狭小化
・下垂体腫大
・頭蓋内静脈、静脈洞拡張像

  1. 脊髄MRI画像

・くも膜下腔外の液体貯留像
・硬膜外液体貯留像
・硬膜造影効果所見
・硬膜外静脈叢拡張像

  1. RI(放射性同位元素)脳槽シンチグラフィー

RI脳槽シンチグラフィーは、腰椎穿刺で放射性同位元素を髄腔内に注入します。経時的に全脊椎を撮影して放射性同位元素を介して髄液の流れをみることで脊髄硬膜から放射性同位元素が漏出しているかを確認します。これを髄液漏出像と呼び、重要な所見です。またRI脳槽シンチグラフィーでは、放射性同位元素の集積量を経時的に定量でき、RI残存率が算出できます。脳脊髄液減少症ではRI残存率の低下が認められ、重要な所見です。

  1. CTミエログラフィー

腰椎穿刺で髄腔内に造影剤を注入後に頚椎から腰椎までのCTを撮影します。CTミエログラフィーはRI脳槽シンチグラフィーよりも空間分解能に優れており、髄液漏出像を明確に描出できます。

  1. MRミエログラフィー

MRミエログラフィーでは造影剤を用いることなく検査をすることができるため、リスクのある腰椎穿刺もせずに検査が施行でき、造影剤アレルギーや腎機能障害など造影剤が使用できない症例に施行できます。ただ、MRIミエログラフィーのみで、髄液濾出像有無の鑑別は難しく、MRIで正常と判断されても、ほかの検査で脳脊髄液減少症と診断されることもあります。

治療

  1. 保存的治療:安静臥床、水分摂取や点滴による水分補充
  1. 硬膜外腔生理食塩水注入:脳脊髄液が減少した硬膜内に生理食塩水を注入して減少した脳脊髄液を補う治療です。

 

  1. ブラッドパッチ(硬膜外自家血注入):脳脊髄液が漏れ出ている部分に自身の静脈血を注入し、血液が固まるはたらきを生かして漏出を塞ぐ治療です。

起立時の頭痛、めまいなどの症状を色々検査したにもかかわらず長い間原因不明で、脳脊髄液減少症と診断されるまで時間がかかることも少なくありません。当院も脳神経内科医が在籍しておりますのでお困りがありましたらお気軽にお問い合わせください。




いなざわ駅前内科クリニックでは、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病をはじめ、頭痛、脳卒中、パーキンソン病、認知症、てんかんなどの脳神経疾患、不眠症、うつ病、適応障害、アルコール依存症、不安症、強迫性障害などの精神疾患・メンタルヘルスの問題に対応しております。一宮市、名古屋市、稲沢市、岐阜市、清須市、岩倉市、津島市、愛西市、あま市、北名古屋市など、幅広い地域から多くの患者様にご来院いただいております。稲沢市で内科・脳神経内科・心療内科・精神科をお探しの方は、いなざわ駅前内科クリニックへお気軽にご相談ください。