基礎知識

Disease Basics
診療案内

起床時の体調不良は、起立性調節障害による症状かもしれません。

起立性調節障害とは、自律神経の異常によって血圧や心拍数の調節が上手くはたらかず、立ち上がったときに血圧が低下したり、心拍数が上がり過ぎたり、調節に時間がかかりすぎたりして、立ちくらみやめまい、動悸、失神などを引き起こす病気です。
人間は立ち上がった時に重力に逆らって血液を足から心臓や脳に向けて循環させます。この血液循環を調節する役割を持つ自律神経機能に問題が生じると、下半身に血液がたまりがちになり、上半身は血液循環が不良になります。そのため朝立ち上がった時に全身に倦怠感が生じるほか、脳にも血液が届きにくくなり、めまいや立ちくらみを引き起こします。
起立性調節障害の多くは、自律神経機能が未熟な学童期から思春期に発症することが多く、成長とともに徐々に改善します。しかし、重症の場合は、起床時のめまいやふらつきなどが原因で朝起きられず学校にいけないなど、日常生活や社会生活にも重大な支障をきたすことがあります。
この疾患は自律神経疾患なので身体的要素以外に、運動不足や心理的ストレス、水分の摂取不足など精神的、環境的要素もこの病気を誘因・悪化させる原因といわれております。

症状
以下の11の身体症状のうち、3つ以上あれば(あるいは2つでも症状が強い場合)起立性調節障害を疑います。
①立ちくらみ、めまい
②起立時の失神:起立直後の交感神経の機能が十分に働かないことによる低血圧により生じます。
③気分不良
④朝の起床困難:午前中の体調不良や夜遅い就眠時間が原因のことが多いです。
⑤頭痛:午前中に強い傾向にあります。中には片頭痛や緊張性頭痛の合併もあります。
⑥腹痛
⑦動悸
⑧全身倦怠感:午前中に調子が悪く午後に回復する傾向になります。
⑨食欲不振
⑩乗り物酔い
⑪顔色が悪い

検査
①血液検査:鉄欠乏性貧血、副腎、甲状腺など内分泌疾患などを除外目的で施行されます。
②心電図:失神を引き起こす不整脈の有無を調べるために心電図検査を行います。正確な診断のためには、24時間心電図を連続で計測するホルター心電図検査が必要となることもあります。
③頭部CT、MRI画像:失神の原因には、もやもや病など脳疾患の可能性も否定できず必要な場合があります。
④新起立試験:起立性調節障害の診断に必須となる検査です。検査では、10分間横になった後すぐに10分間起立し、血圧と心拍数を測定します。この検査により起立性調節障害は、以下の4つのタイプに分けられます。
(1)起立直後性低血圧
起立直後の血圧低下からの回復に時間がかかるタイプ。血圧の回復時間が25秒以上かかります。
(2)体位性頻脈症候群
血圧の回復に異常はないが、起立後心拍の回復がなく上昇したままのタイプ。起立時の心拍数が115以上、または起立中の平均心拍増加が35以上みられます。
(3)神経調節性失神
起立中に急激な血圧低下によっていきなり失神するタイプ。
(4)遷延性起立性低血圧
起立を続けることにより徐々に血圧が低下して失神に至るタイプ。起立数分以後に血圧が徐々に下降し、収縮期血圧が15%以上、または20mmHg以上低下します。
起立性調節障害の中で(1)、(2)が多く、(3)、(4)は少ない傾向にあります。

治療 基本的には薬物療法は積極的には使用しないことが多いです。
非薬物療法
1.運動療法
・毎日の散歩程度の運動をすすめる。
たとえば1日15分の歩行など、毎日運動をする習慣をつける。

2.動作時の工夫
・起立時には、いきなり立ち上がらずに、頭を下げて前かがみになりながら、30 秒程かけてゆっくり起立します。
・歩行開始時は、頭を下げて前かがみになれば、脳血流が低下しないので起立時の失神を予防できます。
・起立中は、足踏みや頭を下げて前かがみになるように心掛けます。

3.規則正しい生活リズム:お子様の場合は、強制してストレスにならないように心掛けることが必要です。
・夜更かし、朝寝坊、昼寝をしないようにする。
・就寝1時間前までに入浴をすませ、心身をリラックスさせます。

4.暑い場所をさけること
・暑い場所では、血管は拡張してしまい、発汗によって脱水をおこし、血圧が低下しやすいため注意が必要です。入浴は短時間ですませることもお勧めできます。

5.下半身圧迫装具
・下半身への血液貯留を防ぎ、脳など上半身の血液循環低下を防止するため、足に弾性ストッキングの装着や、腹部に加圧式腹部バンドをつけることも有効です。

6.食事の注意
・循環血漿量を増やし血圧を上げるために食事時にやや多めの食塩摂取も推奨されます。

7. 環境調整
・学校関係者や保護者に起立性調節障害への理解を深めてもらい、本人が適切な配慮やサポートを受けられる環境を整えることが重要であります。
起立性調節障害は自律神経系の疾患で、心の影響を受けやすいので、ストレスは症状悪化の大きな要因になります。症状がひどく学校に行けないことを子どもたちは非常につらく感じています。その苦痛を理解し、本人を責めることなく、共感しながら対応し、頑張っていることを評価することがとても重要です。

薬物療法
失神を起こすなど日常生活に支障をきたすほど重症な場合には、血圧を上昇させる薬物療法が行われる場合があります。
昇圧剤の例:メトリジン、リズミックなど

起立性調節障害は,日常生活や社会生活に支障をきたす疾患です。この疾患は、学童期から思春期に発症することが多いため、15歳未満の方は児童精神科、小児科の受診をおすすめしますが、15歳以上の方は、当院は、脳神経内科医師が在籍しておりますのでご不安な点がございましたら遠慮なくお問い合わせください。




いなざわ駅前内科クリニックでは、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病をはじめ、頭痛、脳卒中、パーキンソン病、認知症、てんかんなどの脳神経疾患、不眠症、うつ病、適応障害、アルコール依存症、不安症、強迫性障害などの精神疾患・メンタルヘルスの問題に対応しております。一宮市、名古屋市、稲沢市、岐阜市、清須市、岩倉市、津島市、愛西市、あま市、北名古屋市など、幅広い地域から多くの患者様にご来院いただいております。稲沢市で内科・脳神経内科・心療内科・精神科をお探しの方は、いなざわ駅前内科クリニックへお気軽にご相談ください。