ギラン・バレー症候群は、重症化することもあり早期診断が重要です。
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ギラン・バレー症候群は、感染症などをきっかけにして、免疫の異常により、自己の末梢神経を攻撃する自己免疫疾患であると考えられています。
急性上気道炎、扁桃炎、急性胃腸炎、感冒症状などの症状が、神経症状出現の1〜3週間ほど前にみられ、全例の約3分の2で先行感染が認められます。
症状の程度は様々だが、運動神経の障害が主で初発症状は下肢の筋力低下から起こることが多く、下肢から体幹部に向かい左右対称性に筋力低下や麻痺が進行する。さらに、顔面麻痺、食べ物が飲み込みづらい、しゃべりにくい、物が二重に見えるなどの症状が生じることもあります。
また、重症化し呼吸筋の麻痺が発症すると呼吸が苦しいなどの症状が生じ、人工呼吸器により呼吸管理が必要となることもあります。運動神経の障害が主であるが、軽度の感覚神経障害も発症します。
末梢神経のなかでも自律神経の障害が強い場合は、不整脈、起立性低血圧などの血圧の高度の変動などの症状が生じます。
原因
① 感染症
ギラン・バレー症候群は、下痢を引き起こすカンピロバクター、サイトメガロウイルス、EBウイルスなどの感染症などがきっかけで生じるといわれております。新型コロナウィルス感染の後に発症するケースも報告されています。
② ワクチン
季節性インフルエンザワクチンがギラン・バレー症候群を引き起こす可能性が指摘されていますが、非常に稀なもので、むしろインフルエンザウイルスの感染のほうが、インフルエンザワクチン接種よりもギラン・バレー症候群の強い危険因子であり、ワクチン接種でインフルエンザに罹患するリスクを減らすことが重要です。
③ 医薬品
肝炎治療などに使用されるインターフェロン製剤、関節リウマチなどに使用されるペニシラミン、感染症に使用されるニュー キノロン系抗菌薬、HIV感染症に使用される抗ウイルス化学療法薬、抗がん剤などが知られていますが、ごくまれの頻度でありギラン・バレー症候群の発症をおそれ、問題となっている病気の治療を躊躇しないことが重要です。
検査
① 血液検査
急性期の血清中に自己抗体である抗糖脂質抗体を認めることがあり、抗糖脂質抗体は急性期に50%〜60%の例で認められ、回復期には消失ないし低下します。他の末梢神経障害疾患の除外のために抗糖脂質抗体の有無を調べます。
② 頭部画像検査
脳や脊髄などの中枢神経の異常による症状との鑑別をするため、CTやMRIなどによる画像検査が行われます。
③ 神経伝導検査
末梢神経の電気的な活動が伝わる速さを測定することで、末梢神経が正常に機能しているか調べることができる検査です。ギラン・バレー症候群では、電気的な活動が伝わる速度が遅くなったり、伝わらなくなったりする部位が生じるため、診断の大きな手がかりとなります。末梢神経には軸索という電気を伝える中心部分が髄鞘という鞘で包まれている有髄神経と髄鞘に包まれていない無髄神経とに分類されます。ギラン・バレー症候群は、有髄神経の髄鞘が障害される脱髄が主体になる脱髄型と軸索障害が主体になる軸索障害型があります。脱髄型は、短期回復しやすい傾向にあり、軸索型は、重篤な呼吸筋の麻痺や自律神経障害を来たし、後遺症を残しやすいタイプです。この点から脱髄型なのか軸索障害型なのかを知ることは、ギラン・バレー症候群の診断においては非常に重要な検査で、脱髄型なのか軸索障害型なのかの鑑別にも有用な検査です。
④ 髄液検査
ギラン・バレー症候群では、蛋白細胞解離と呼ばれる髄液中の蛋白が増加し、細胞数が正常といった変化が生じ、診断に有用です。髄液内に細胞浸潤はないが、組織障害が起こり蛋白の上昇が起こっていると考えられています。ただ、発症後1週間以内には20~30%が髄液蛋白正常であるため髄液蛋白正常であってもギラン・バレー症候群を否定することはできないので注意が必要です。
治療
ギラン・バレー症候群は治療を行わなくても自然に症状が改善する病気と考えられていましたが、中には、呼吸筋麻痺が生じ呼吸不全で命を落とすこともあり、早期に適切な治療がされないと後遺症を残す場合もあります。したがって、発症してからなるべく早く治療を開始する必要があります。
① 血液浄化療法
血液中の病気の原因である抗体や補体など有害な物質を取り除いて体内に戻す治療法です。ギラン・バレー症候群に対して血液浄化療法を行うと、症状が軽くなり、回復が早くなることが確認されています。
② 免疫グロブリン大量静注療法
原因となっている抗体を抑えるため、大量の免疫グロブリン製剤を点滴で投与します。
治療の効果が乏しい因子としては、高齢者の方、先行感染として下痢症状があった方、発症時や症状がピークの時に高度の麻痺がある方、人工呼吸を必要とする呼吸筋麻痺がある方、神経伝導検査で軸索障害型を疑わせる所見のある方、不整脈、起立性低血圧などの自律神経障害がみられた方などがあります。
ギラン・バレー症候群の中には、放置しておくと重度な神経障害の後遺症が残り、呼吸筋麻痺で呼吸抑制をきたし命の危険を脅かすことがあり、早期治療のため早期診断が必要です。発症初期では、なかなかギラン・バレー症候群に気づかれにくく、治療が遅れてしまいがちです。当院では、脳神経内科医が在籍しており、気になる症状がありましたらご遠慮なくお問い合わせください。
いなざわ駅前内科クリニックでは、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病をはじめ、頭痛、脳卒中、パーキンソン病、認知症、てんかんなどの脳神経疾患、不眠症、うつ病、適応障害、アルコール依存症、不安症、強迫性障害などの精神疾患・メンタルヘルスの問題に対応しております。一宮市、名古屋市、稲沢市、岐阜市、清須市、岩倉市、津島市、愛西市、あま市、北名古屋市など、幅広い地域から多くの患者様にご来院いただいております。稲沢市で内科・脳神経内科・心療内科・精神科をお探しの方は、いなざわ駅前内科クリニックへお気軽にご相談ください。